水曜日は花屋と魚屋がお休み。
まだ寒い午前中、近所にお届け物をした帰りに温かいコーヒーが飲みたくなった。
いつもの道、いつも通り過ぎるカフェを今日も通り過ぎ…いや、かれこれ5年前から通り過ぎている。
小さな店構えなのでいつも入る勇気が持てないでいたが、今日は、今日こそは思い切って入ってみよう。
レジのあるカウンターにはコーヒー豆がずらり。
「BLACKBERRY」「CHOCOLATE」「ORANGE」「RAISIN」など、フレーバー名を見ただけでワクワクしてくる。
酸味があまり得意ではないことを店主に伝えてみると、おすすめはブレンドとのこと。
けれども横文字のフレーバーに惹かれてしまい、思い切ってそれを伝えるとその中でも酸味が控えめなものを勧めてくれた。
今日はなんだか思い切れる日だ。
店の入り口はドアが開けっぱなしになっているけれど暖房が効いているので室内は寒くない。
寒波が来ている昨今、思わず暖房費の心配をしてしまうが、せっかく意を決して入ったのだから余計なことを考えず、この空間を味わおう。
メインの大通り沿いは通勤通学時間帯が過ぎたものの、車やバスがひっきりなしに通る。
バスが停車する「ピンポンピンポン」の停車音、園児を連れた保育士さんのかけ声、店の前を足早に駆けていく人、自転車は一瞬で目の前を通り過ぎる。
コーヒーが来て、最初の一口…今まで苦手だと思っていた酸味が全く嫌ではない。
「本来のコーヒーの酸味って尖った酸味じゃないんですね」なんて分かったような口を聞く。
…どうも今日の私は攻め気味だ。
キラキラと眩しい景色と心地よい音楽。
「帰ったら片付けをして、あれもこれもやらなきゃ」と自分に課していたものが「ま、明日でもいっか」と思えてくる。
5年間も通り過ぎていた店に思い切って入る。
たったそれだけのことで、自分の住んでいる街にまたひとつお気に入りの場所ができたことに浮かれ、店主にお礼を言って店を出る。
さっきまでいつもと変わらない道だったのに、今は目に映る景色が色鮮やかだ。
花屋と魚屋には行けなかったが、今日はいい日になりそう。

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